Day2 Chapter3 : Oslo, Norway
前回までのあらすじ:ノルウェー・オスロにあるアーケスフース城に来ました
東京ではまずこんな広い所ないし、いつも人が多くてこんな風には歩けない。
日本にいた頃は、雪の上を歩いても、自分の生きた足跡すら残せなかった幽霊のような自分…
そんな自分を変えようと思ったきっかけになった、ノルウェーとデンマークの旅です。
ミリタリー博物館
その後どこ行こうかなーと珍しく地図を広げてみたら、"ミリタリー博物館"なるものを発見する。
こ、これは行かなくちゃ!
博物館の前には雪をかぶったMー24戦車がででーんとお出迎え。
雪の戦車とかかっこいいので、ニヤニヤしながら写メを撮る。
中に入るとあと5分で閉まるとのことだが、職員のおじいちゃんのおかげで見ていいよって言われた。
悪いから1階だけ見てたら「何見てるの!二階見たの?」って言われて上も見た。
ヴァイキングの国はRPGの国だった。
剣、ハンマー、サーベル、ブロードソード、銃…
なんだ、この本場のRPGワールド!楽しすぎる。
喪女が恋に落ちた話
ほくほくして帰ったら、アーケスフース城の吊り橋で謎の白人が写真を撮っている。
カシャ!カシャ!カシャ…
白人は後ろ姿のままこっちに近づいてきて、クルッと振り向いた。
謎の白人男「僕の写真撮ってくれない?」
!?(MGSの発見SE)
ひきこもり喪女、海外で初見知らぬ人に話しかけられる。
なんなんだ、そのエンカウントの仕方は。
いいよってカメラを受け取る。
(重ッ!)
当時は写真をやっておらず、コンデジと一眼の違いすら知らなかった自分である。
(カメラのことなどほぼわからなかったが、今思い返すと、彼に手渡されたカメラがとても重く、Nikon のD3あたりだったと思う。 )
カメラ渡して帰ろうとしたら、どこから来たのって聞かれた。
「に…日本です」(どもり英語)
「名前は?」
「…喪女です」
「僕はあーたん。よろしく!!」
白い歯を浮かべて微笑む男。ガッチリと握手をされる(ヨーロッパ男性特有の気さくな挨拶)。
白人のおっさんはあーたんと言った。たぶん40台くらい。
思いっきり白人だけど、うちの父に顔と体格がよく似ている。
背が低い、けど目が青いです…!
しかも、ヨーロッパの空よりきれいな青い色の目、やばい、喪女のときめきが止まらない。
海外行ってビッチがほいほい白人についていく現象は当方喪女も存じ上げておりますが…
いやあ…余りに声の掛け方が自然すぎて、付いていくほかないよ… ! (ダメな喪女の典型例)
フォトジャーナリストあーたんとの出会い
あーたんは、カメラマンでたまにジャーナリストもやっているという、ポーランド人とフランス人のハーフでコスモポリタンでダブリン住みという、引きこもりで純ジャパ喪女とはまるきり真逆な存在である。
あーたん「きみがミリタリー博物館に入ってくのを見たんだ」
私(え、あ、そうなの…人間どこで見られてるかわからんな… )
あーたん「僕、これから町の方へ行くんだ。君も帰るなら一緒に行こうよ」
ここで25、6歳頃の私は、子供の頃に教わった、いたってシンプルで簡単なことを思い出す→知らない人についていってはいけない 。
それは5歳児でも知っている常識である。いかのおすしである。
私(しかしもう周りの施設は閉館時間だし、周りに人もいないし、逃げ道が…ない…)
あーたんといっしょにお城を歩く
ジャパニーズ喪女の私はなぜかこの異国の地で、このあーたん(共に外国人)と中心部まで歩くはめになってしまった。
彼はフォトジャーナリストだけど、1年間のホリデイ?みたいのでフリーランスだからなんて説明したらいいのかな…と言っていた。
「日本から来たんだよね?福島って今はどうなの?」
「日本の経済状況はどうなの?」
ナンパ目的に加え、旅慣れているのか記者の血が騒ぐのか、違う国の社会に興味があるようだった。
旅先で初めての出会いだったし、日本について聞かれたのもなんだか嬉しかった。ただし英語できなくて答えられず泣きそう。
あーたんの言っていることは大体わかるけど、自分で言えない状態でうまく伝えられなくてもどもどしてるんだけど、自分のつたない言葉からあーたんは必死にくみ取って、会話を膨らませてくれる。
ヤリ目でもナンパでもいいさ、異国の人と話しているだけでなんとなくうれしい。テンションが上がる。
あーたんにもらったガム噛みながら、アーケスフース城を戻る。
海外でいきなりEUカメラマンのナンパスキルを見せていただく喪女
衛兵さんが通るとこを写真でおさめたり、気になるものを写真をおさめていくあーたん。
あーたんは簡単に捕まった喪女とフォトデートなるものを楽しんでいるのだろうか。
あーたんは自分勝手である。
自分のペースで立ち止まって撮っては、進むとなったらペースが速い。
ナンパしているとは思えないとても自己中心的な歩き方であるが、目の前の非日常に、喪女は焦って時間感覚も分からない。
自分はさっき写真を撮ったので見ているだけだが、今は隣にあーたんがいるので、まったくさきほどの海沿いの光景とは異なって見える。
(同じ風景でも、隣にいる人が違うだけでこんなに違う風に見えるんだ…)
海沿いにはおしゃれで世界一高い物価のカフェが並んでいる
そのあたりにいろんな彫像なんかが置かれたりしており、デートで歩くのにはとてもよいスポットとなっている。
カフェのテーブルにお茶を飲む男女の像があって、あーたんはやたらその像を撮っていた。
(私が一人でそこを通ったときそんなに心を動かされなかったのだが… )
あーたんがなぜか熱心に何ショットも切っていた男女の像。(※当時の自分の写真)
あーたん「ほら見て、いいのが撮れた」
そして、にっこり意味深に微笑むあーたん。
(ハイ、ナルシストさん特有のくっさい口説きキタ━(゚∀゚)━!)
…言葉も通じないこの日本人に、こんなクッサいこと出来るのはおそらく世界でお前だけだ、あーたん。
私(少女漫画なんて目じゃねえ、ロマン主義本場の目の青い外人さんはリアル三次元でこんな素敵なナンパをしてくるんや!)
今でこそ「お前大概にせぇよ?」と思えるこの言動も、海外旅行マジックにかかった当時の喪女の前ではすべてがビューティフルである。 もう、胸の乙女トキメキが止まらないのである。
言葉の壁がある外国人に対し、こんなアグレッシブかつロマンチックなナンパをできる人が、果たして日本にいるだろうか?
もう、これこそ異文化のぶつかり合いである。私は旅先にいる。
(ちなみに、あーたんは「これは仕事のフォトじゃないよ」と言っていた…)
※なぜかその後ご縁があって帰国後いろんなカメラマンに会うことになるのだが、日本のカ メラマンも 絶対そういう写真の使い方はしないし、フランス帰りのカメラマンもそういう写真の使い方はしないし、あーたんの母国 ポーランドで会ったカメラマンも、写真でそういう使い方はしないことを付け加えておく。
でも気になる、あーたんの生き方
当方英語が完璧に分かるわけではないけど、言葉の端々から聞き取れる範囲では、言葉の表現が素直でいい人だなと思った。嫌いじゃないし、何より、異文化から来たボーダーを超えた人に対してもコミュニケーションを図ってくる。その心意気がすごい。それは、一体どこに由来するものなのだろうか?
彼はコスモポリタンで、自分の血縁とは違う国に住んでいる。
ポーランド人が西欧各国に出稼ぎで移民して入っていることは知っていた。
衛兵さんと。あーたんが撮影してくれた
それにしても、こういうナンパスキルは恋愛上級国民ことフランスの血がそうさせるのか?
ポーランド人はどこにでも移民できる資質があるみたいだけど、ポーランドの血がこんな高等なコミュニケーション能力を持っているのか…
人間に流れる遺伝と文化のルーツとは、とても奥深い。
しかし恋に落ちた喪女が盲目
あーたん曰く、 「海岸の隅にダライラマみたいな僧侶の像があるんだよ。僕はそれを写真に撮りたくて」 と言う。
仏像なら日本にたくさんあるので自分は興味がなかったが、同行する。
たしかに、オスロの海岸ぞいになぜか知らないがアジア系坊さんの像が海のほうを向いて立っていた。不思議である。
炎が炊いてあるのを、あーたんは坊主が上手に屏風にジョーズの絵を描いたように写真を撮る。
いいのが撮れたと言って満足げなあーたん。
しかし、行きに絶対見ているはずよね、その像?
そして、そのアコギな写真撮影の仕方とそれだけオスロに詳しいところを見ると、お前はここに来たことがあるのではないだろうか…?
写真を撮る俺カッケーで今夜のカモネギゲットなのだろうか?
しかし、異国の海岸でぜんぜん違う国籍の人間どうしが歩いてるって不思議な光景である。
誰にも話しかけられない旅より、話しかけられる旅の方が楽しい。旅とはまさに、未知との遭遇である。
そして、あーたんは居て楽しい…言葉がわからないのに、居て楽しいって何だこれ。
ぜんぜんお
しゃれじゃないのに、背も低くて私より少し高いくらいなのに、目も髪の色も肌の色も違うのに何でだろう。
たとえばこの人が日本人であって、同じ言葉を喋っていたとしても居て楽しいんだろうな。
海外でよく日本人女が白人にナンパされてヤリ逃げ…って話は聞くけど、別に彼がやりにげコージーでも正直許せると思った。
(いや、むしろ経験値を積ませていただくのは私なので、イーブンになるんではないだろうか。 )
私はYellow cabのビッチではない、日本を代表する典型的な2次元大好き喪女である。
ノルウェーのコンビニでお茶をする
本当はアーケフース城のほかにも行けるだけどこか行ってみようと思ってたんだけど、突然の出来事に吃驚してどこも行かなかった。
私はすっかりあーたんのカモネギと化してしまった。
終始ずっとあーたんのペースである。あーたんがショットするたびに、喪城の心の鉄壁を無双し続けてくるので、私は陥落寸前である。
あーたんが「お金ないからバグマシーン探さねば」 とか言って入ったけど、バグマシーン=ATMのことなのね…
今でこそコンビニカフェはメジャーな存在となったが、まだこの頃の日本になかった時代。
私は珍しかったのでノルウェーのコンビニを好奇心で見る。
25Krのコーヒーとチャイラテを割り勘する。
あーたんはそれに自分用のパンを3個くらい買って1個くれた。
(でもびっくりするくらいまずくて全部食べられなかった。 )
あーたん、これ見よがしに帽子をおもむろに脱ぎ、目をキラっとする。
(やばい、撃たれた…)
目が合った瞬間に、喪女速攻でフォーリンラブ。
き、綺麗な金髪碧眼だ!ホンモノだ! ど、どど、金髪童貞ちゃうわ!
金髪なんて海外からの英語教師を遠目に見るだけだったので、ポーランド系特有のちょっと鳶色がかった金髪を間近に見、綺麗だなあと思う。
海外でフォトグラファーのお仕事を知る
あーたんは仕事の空き時間にアーケフース城来てたらしく
「8時間歩いてたんだ、これで」
と言って、リュックの中を見せてくれた。中にはフルサイズの一眼が3個くらい入ってた。
「カメラをラゲージに入れると機材壊れちゃうから」
と、かなり重い荷物を背負ってきた模様。
あーたんはスキーとか、スポーツ中心に写真を撮るフォトジャーナリストらしく、記者証見せてくれた。
「昨日の夜着いて、今日はスキー試合の仕事一つして、これからホッケーの試合撮りにいくんだ」
あーたんはすごい、やっぱり報道カメラマンだ。
あーたんの書いた記事とか、写真を見せてもらった。
仕事用の写真ではお堅いニュース系のも撮るけど、趣味兼営業用みたいなものも見せてくれた。
スタジオ写真ではなくて、彼の趣味での写真は、基本的にスナップショットや旅フォトが多い。
旅のスナップではあるが、趣味の旅先での写真は、そこにいて楽しかったという気持ちもなんとなく見えてくる。あーたんはフォトグラファーで、旅人だ。
あーたんは、限られた滞在時間で趣味のフォトを撮り、外国人(喪女)をナンパし、これからスポーツの大会の写真を撮りに行くんだ… すごい時間の使い方だなあ。
あーたんは地図を広げながら
「僕はここ泊まってるんだ」
とさらりと連絡先を渡される。
狙った獲物にガンガンスナイプしていくハンターなんだな、すげーな外人のナンパは。(他人事)
「きみのフェイスブックは?」
フェイスブックとかやらないから。友達少ない喪女ばれるから。
でもメールアドレスを残す。
「おしゃれしてあとで会おうね!」 みたいなこと言われて、あーたんと別れる。
Hちゃんとの待ち合わせ場所に行く電車がわからなくて、通りすがりの既婚と思われる、素敵なロン毛のおじさまにお声を掛けたら、親切に「アウトサイド(外側)だよ」(笑顔)って教えてくれた。
いや、あなたの外妻になってもいいですか?
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